▷矯正歯科用アンカースクリューとは?
矯正歯科用アンカースクリューとは、直径1〜2㎜、長さ6〜10㎜ほどの小さな医療用のネジのことを言います。材質は、人工関節や人工歯根などにも用いられるチタン性でできており、生体親和性に優れ、金属アレルギーの心配もない安全な金属です。
▷矯正歯科用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療とは?
アンカースクリューを骨の中に埋め込み、歯を動かすための固定源とすることで、目的の歯を効率的に動かすことが可能となり、治療期間の短縮や治療の確実性の向上に繋がります。これまでは外科的手術の併用が必要であった症例や患者さんの負担の大きいヘッドギアなどが必要であった症例でも、アンカースクリューの使用により、患者さんの負担を軽減し、安全で効率的な治療を行うことができます。
▷アンカースクリューのメリット
・効率的に歯を動かすことができるので、治療期間の短縮に繋がります。
・ヘッドギアなどの付加的な装置が不要になります。
・歯を抜かずに治療できる可能性が高まります。
・難易度の高い症例の治療の確実性が高まります。
・外科的手術併用が必要である症例も、矯正治療単独で治療可能になる可能性が高まります。
▷アンカースクリューのデメリット
・アンカースクリュー埋入のための外科処置が必要になります。
・アンカースクリュー周囲の清掃不足により、腫れ(炎症)や痛みが生じることがあります。
・アンカースクリューが安定せず、ぐらついたり、抜け落ちたりした場合には、再埋入が必要になることがあります。
・歯根を傷つける可能性があります。
・治療終了時にはアンカースクリューを除去する必要があります。
▷アンカースクリュー埋入の手順
Step1:レントゲン、口腔内診査を行い埋入部位を検討します。
Step2:表面麻酔を行なったのち、埋入部位に部分麻酔を行います。麻酔の量は、虫歯治療などで行う際よりもかなり少ない量です。
Step3:専用のドライバーを用いて、アンカースクリューを埋入していきます。おおよそ5分程度で埋入は完了します。
Step4:正しい位置に埋入することができたか確認するために、CT撮影を行います。
Step5:清掃方法などの指導を行い、抗生物質と鎮痛剤をお渡しします。
Step6:矯正治療終了時にアンカースクリューを撤去します。その際、麻酔は必要ありません。アンカースクリューの傷跡は2〜3日程で自然に塞がっていきます。
▷アンカースクリューの注意点
・炎症や感染症を起こすことがある
アンカースクリュー周囲が不衛生になると、感染症や炎症が生じ、腫れや痛みが生じることがあります。炎症が悪化すると、アンカースクリューの動揺や脱離の原因になることもあるので、口腔内は常に清潔に保つように気をつける必要があります。
・アンカースクリューの脱落や再埋入が必要なことがある
十分に精査し、注意をした上で埋入をしても、顎の骨の状態や感染などによりアンカースクリューが動揺したり、脱落したりすることがあります。その場合、再埋入が必要になる場合があります。また、どうしてもアンカースクリューが安定しない場合には、別の装置などで対応する場合もあります。
・年齢について
原則として、適応年齢は骨がしっかりしてくる16歳以降が対象とされています(「歯科矯正用アンカースクリューガイドライン」一般社団法人日本矯正歯科学会作成参照)。ただし、性差や個人差もあるため、骨の状態がよく治療に必要と考えられる場合には、使用する場合もあります。
・歯根を傷つける可能性があります
CTやレントゲンで精査した上でアンカースクリューの埋入を行いますが、歯と歯の間の小さな隙間にアンカースクリューを埋め込むため、歯の根っこにぶつかる可能性もゼロではありません。また、埋入部位によっては神経や血管の損傷に注意が必要な場合もあります。